中濵直之 京都大学大学院農学研究科博士後期課程学生 (現:東京大学総合文化研究科 日本学術振興会特別研究員PD)、内田圭 横浜国立大学環境情報研究院産官学連携研究員、丑丸敦史 神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授、井鷺裕司 京都大学大学院農学研究科教授らのグループは、草地性絶滅危惧チョウ類であるコヒョウモンモドキを材料に、縄文時代から現在までの個体数の増減の歴史を明らかにしました。

本種の遺伝子解析の結果、縄文時代中期 (約6000年前) 以降は個体数が大きく増加したものの、20世紀以降の草地面積の減少に伴い過去30年間には個体数が激減したという、まさに「栄枯盛衰」をたどったことが分かりました。近年多くの草地性生物が絶滅の危機に瀕していることから保全意識が高まっていますが、これまでに長期的な視点と短期的な視点の両方から日本国内で草地性生物の歴史を明らかにした研究例はありませんでした。本研究は、日本の草地性生物の保全だけでなく、草地生態系全体を理解するうえで極めて重要な意義を持ちます。

さらに、本研究では過去30年間の個体数の変化の推定にチョウ類の標本のDNAを用いています。これまで昆虫の乾燥標本は、DNAが劣化しているため遺伝解析が難しいとされてきましたが、本研究では、過去の情報の復元に標本DNAが有用であることを示しました。

本研究成果は2018年2月26日に、英科学誌「Heredity」の電子版に掲載されました。

論文情報

タイトル

Historical changes in grassland area determined the demography of semi-natural grassland butterflies in Japan
(日本の草地面積の歴史的変遷が草地性チョウ類の集団動態を決定する)

DOI

10.1038/s41437-018-0057-2

著者

Naoyuki Nakahama, Kei Uchida, Atushi Ushimaru, Yuji Isagi
(中濵 直之、内田 圭、丑丸 敦史、井鷺 裕司)

掲載誌

Heredity

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